2026年2月20日、札幌地裁で下された一つの判決が、日本の漫画業界を震撼させました。

漫画家・山本章一氏による元教え子への性加害が民事裁判で認定され、1100万円の賠償が命じられたのです。

それだけでも十分すぎるほど衝撃的なのに、次々と明らかになってきた「その後」の話が、さらに大きな炎上を呼びました。

問題の核心は、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)で罰金刑を受けた漫画家が、別の名義で再起用されていたこと

そして、それを知りながら再起用を進めたとされる編集部の存在です。

あの人気漫画アプリ「マンガワン」で何が起きていたのか、そして小学館はこれからどう動くのか。

28日には小学館が自社連載作家への信頼を裏切ったことを認め、追加の謝罪声明を発表するなど、事態はまだ進行中です。

正直、これだけの問題が長い間表に出なかったことに、驚かされた方も多いのではないでしょうか。

今わかっている情報を、できるだけわかりやすく整理してお伝えしていきます。

 

山本章一の問題による常人仮面の配信停止

判決が報じられてから数日のうちに、マンガワンは大きな決断を下しました。

連載中だった作品『常人仮面』の全話公開を即時停止し、単行本の出荷停止と回収を発表したのです。

ここでは、その判断の背景と、それによって生じた影響について詳しく見ていきます。

 

配信停止に至るまでの経緯

『常人仮面』は、2022年にマンガワンで連載を開始した作品です。

原作者として名を連ねていたのが「一路一」というペンネームで、その正体が漫画家・山本章一氏だったことが、今回の判決をきっかけに広く知られることになりました。

山本氏は2016年頃から約3年間、北海道の通信制高校でデッサンの非常勤講師を務めながら、当時15歳だった教え子に性的暴行を繰り返していました。

2020年に児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の罪で逮捕・略式起訴され、罰金30万円の処分を受け、当時連載していた『堕天作戦』は連載中止となっています。

ところが2022年、今度は「一路一」という別ペンネームで新たな連載を始めていたのです。

まるで何事もなかったかのように業界に戻ってきた形で、この事実はファンに強い衝撃を与えました。

2026年2月27日、マンガワン編集部はアプリ内と公式サイトに謝罪文を掲載。

本来であれば原作者として起用すべきではなかった」と認め、『常人仮面』の配信停止を宣言しました。

翌28日には小学館本体も声明を出し、外部調査委員会の設置を発表しています。

「なぜもっと早く気づけなかったのか」と感じる方も多いと思いますが、それもまた今回の問題の核心の一つではないでしょうか。

単行本の回収と経済的な影響

配信停止と同時に、既刊の単行本1巻についても出荷停止と書店在庫の回収が指示されました。

Amazonなどオンライン販売も停止され、デジタル・紙の両方で作品が市場から姿を消す形となっています。

連載開始から2年余りで累計閲覧数は数百万規模に達していたとみられ、広告収入や単行本売上の喪失は決して小さくないはずです。

ただ、経済的損失の詳細について小学館はまだ公表していません。

ユーザー離れの懸念が広がっているのも当然の流れで、プラットフォームとしての信頼回復には相当な時間がかかるでしょう。

さらに、マンガワン公式YouTubeチャンネル「ウラ漫」の全動画が非公開になったことも明らかになりました。

制作会社が被害者の心情を考慮した判断とされており、影響の広がりはコンテンツ全体に及んでいます。

 

作画担当・鶴吉繪理氏が受けた二次被害

この一件で最も同情を集めたのが、作画を担当していた鶴吉繪理氏でしょう。

彼女は自身のXに「とてもショックを受けています」「作品は絵空事だからこそ、現実で人を傷つける行為があってはならない」「被害者の心身の回復を願っています」と声明を投稿しました。

多くのユーザーから「一番の被害者」「本当に気の毒」という言葉が寄せられており、SNS上の反応を見ているだけで胸が痛くなります。

鶴吉氏は原作者の過去を知らないまま連載に関わっていたとみられ、今回の配信停止で収入の途絶とイメージへの影響という二重の打撃を受けた格好です。

今後の新作オファーへの影響も懸念されており、業界内では彼女への補償について小学館に求める動きも出てきています。

何も知らなかった人がこれだけの被害を受けるという理不尽さ、どうか軽く見ないでほしいと思います。

 

旧作『堕天作戦』はどうなっているか

山本章一氏の旧作である『堕天作戦』については、2020年の逮捕・連載中止の時点からすでに配信停止となっており、現在も閲覧できない状態が続いています。

単行本(全5巻)は絶版扱いで再版の予定はなく、中古市場での流通のみとなっています。

「好きだった作品なのに読めなくなった」という嘆きの声も見られますが、加害者の表現活動を支援することへの倫理的な問いかけでもあり、答えの出ない問題として議論が続いています。

好きな作品だったからこそ、複雑な気持ちになるというのは理解できます。

でも今は、まず被害者が受けた傷の深さに目を向けることが大切なのではないでしょうか。

山本章一の再起用に関与した編集者の処分

配信停止と謝罪が相次いだ一方で、読者やSNSユーザーが最も強く問い続けているのが「責任の所在」という問題です。

再起用という判断を誰が下したのか、示談交渉に関与した編集者はどう処分されるのか。

小学館が設置を発表した外部調査委員会の焦点は、まさにここに集中することになるでしょう。

 

当時の担当編集者の特定と責任

判決文や報道によって明らかになった中で、特に批判を集めているのが、2021年5月頃に行われた示談交渉への編集者の関与です。

被害者・山本氏・担当編集者の3人が参加するLINEグループが作られ、その場で「示談金150万円を支払う代わりに、連載再開を認め、逮捕事実を口外しない」という条件が提示されたとされています。

被害者側は「連載再開を認めるなら逮捕事実を公表してほしい」と求めましたが拒否され、交渉は決裂しました。

マンガワン編集部は声明で「編集者が弁護士への委任と公正証書作成を助言した」と説明していますが、それが「中立的な助言」だったのか「加害者寄りの仲介」だったのかは、まだ判然としていません。

担当編集者の氏名は公表されていませんが、弁護士法違反(非弁行為)に当たる可能性があるとの指摘もあり、法的責任が問われる可能性もゼロではないでしょう。

小学館の社内倫理規定には人権尊重に関する条項があるとみられており、懲戒処分の対象となりえる行為だったといえます。

「編集者個人の判断」で片づけるには、あまりにも深刻な話ではないでしょうか。

 

編集長および役員の管理責任

担当編集者個人の問題だけにとどまらない、という見方も根強くあります。

2020年に罰金刑を受けた作家を、わずか2年後に別名義で再起用するという判断は、一担当者が単独でできるものではないからです。

編集長レベルでの承認があったのかどうか、あるいは犯罪歴の確認プロセスが存在しなかったのか、その点の解明なしに「担当者の問題」で幕引きしようとすれば、さらなる炎上は避けられないでしょう。

セクシー田中さん事件でも組織的な問題が指摘された小学館にとって、今回の役員・経営陣の対応と進退は、信頼回復の試金石になります。

ヤフーニュースのコメント欄でも「上層部が責任を取れ」という声が多数を占めており、そのプレッシャーは相当なものです。

個人を責めることも大切ですが、組織として何を見逃してきたのかを問わなければ、同じことが繰り返されてしまうと思います。

調査委員会の透明性と信頼性

2026年2月28日、小学館は弁護士を加えた外部調査委員会の設置を発表し、迅速に事実関係を解明する予定としています。

ただ、過去の企業不祥事における第三者委員会の事例を見ると、調査結果の一部を非公開にしたり、「外部」と称しながら会社と利害関係のある人物が委員に含まれていたりするケースも少なくありませんでした。

SNSでは「どうせ茶番になる」「委員の名前を先に公表しろ」という冷ややかな声も多く、委員会の構成と調査の進め方次第では、さらなる不信感を招くリスクもあります。

信頼回復のために最低限必要なのは、委員会の独立性の担保と、報告書の完全公開ではないでしょうか。

被害者側の代理人を調査プロセスに何らかの形で関与させることを求める声もあり、小学館がどこまで踏み込むかが注目されます。

調査では連載経緯だけでなく、編集者の和解協議関与も解明対象となる見込みで、Xでは「委員名を公表せよ」という声がさらに高まっています。

今度こそ、うやむやにしない調査を期待したいところです。

 

再発防止策としての作家審査

今回の問題の根本にあるのは、作家を起用する際の審査体制がほぼ機能していなかった点です。

山本氏は2020年に逮捕・略式起訴されており、ペンネームを変えたとしても、同じ出版社系列で再起用するには何らかの確認があってしかるべきでした。

多くの出版社で自己申告が主流ですが、別ペンネームで活動されれば、審査のしようがないというのが実態に近く、これは制度的な欠陥といえます。

今後は警察データベースとの照合を含む第三者機関の活用や、契約書への犯罪条項の追加など、より踏み込んだ仕組みが必要になってくるでしょう。

日本漫画家協会もこの問題を「業界全体に関わる課題」と位置づけており、業界横断的なガイドライン策定の議論が始まっています。

「知らなかった」では済まされない仕組みを作ることが、被害者への最低限の誠意なのではないかと感じます。

 

業界全体の作家起用ルールの変化

この事件をきっかけに、集英社や講談社など他の大手出版社でも、内部で作家起用時の確認プロセス強化の動きが見られます。

一社だけが厳しくするのではなく、業界全体で統一ルールを作らなければ、「別の出版社に行けばいい」という抜け道が残ってしまうからです。

元漫画家でもある赤松健参議院議員は、「作家の交代制度の整備」「被害者補償基金の設立」「犯罪歴の透明化」を提言しており、立法レベルでの対応を視野に入れた議論も始まりつつあります。

漫画市場全体の規模は年間約5000億円とも言われており、その信頼基盤を守るための自浄作用が、今まさに問われているのかもしれません。

日本漫画家協会は28日、「業界全体に関わる課題として、信頼回復に取り組む」とする声明を発表しており、業界全体が動き始めているのは確かです。

声明だけで終わらせず、具体的な行動につながることを願うばかりです。

山本章一事件が漫画業界に与える今後の影響

この事件は、単に一人の漫画家と一つの編集部の問題ではありません。

「漫画を楽しむ」という日常の行為の背後に、どんな構造的問題が潜んでいるかを、否応なしに突きつけてくる事案です。

 

マンガワンへの直接的な影響

今回の炎上を受けて、マンガワンで連載中の複数の漫画家が相次いで配信停止を表明しました。

「強い失望を感じる」「小学館系列のレーベルは連絡してこないでほしい」という厳しい言葉も出ており、プラットフォームとしてのマンガワンへの信頼は大きく傷ついています。

App Storeのレビュー欄では星1つ評価が急増し、アプリのダウンロード数にも影響が出てきているとみられます。

競合の「ピッコマ」や「ジャンプ+」へのユーザー移行が加速する可能性もあり、マンガワンが今後どれだけ早く信頼を回復できるかが、ビジネス上の生命線になってくるでしょう。

一方で、配信停止を表明しない作家を叩く動きも一部で見られたことに、赤松健議員は「配信停止をしない漫画家さんを叩くのは絶対に違う、正義の暴走だ」と警鐘を鳴らしています。

炎上が炎上を呼ぶ状況が二次的な被害を生む可能性があり、冷静な判断が求められる局面でもあります。

怒りの感情はよくわかりますが、その矛先が関係のない人へ向かってしまうのは、誰も幸せにしないと思います。

 

小学館全体の信頼低下と「体質」への批判

2024年のセクシー田中さん事件でも、脚本家と原作者のトラブルに対する小学館の対応が批判を浴びました。

あの一件から2年が経った今、また同じ出版社が組織的な倫理問題の当事者となったわけで、「小学館の体質」への批判は以前にも増して強まっています。

「連続して不祥事が起きている」という現実は、個々の担当者の問題というより、組織文化や内部ガバナンスの問題である可能性が高いでしょう。

外部から有識者を招いて調査委員会を設けるだけでなく、意思決定プロセスの透明化や内部通報制度の実効性を高めることが、本質的な改革には必要なはずです。

「また小学館か」と感じている方は、決して少なくないのではないでしょうか。

被害者にとっての「社会的正義」とは

今回の判決で認定された被害の内容は、読むだけで胸が痛くなるものです。

当時15歳だった被害者は、教師という圧倒的に優位な立場を悪用した暴力により、重度のPTSDと解離性同一性障害を発症し、大学を中退せざるを得ませんでした。

現在も長期的な治療を続けているとされています。

被害者の代理人弁護士は「被害を知ってほしい」「同じ被害者を生まないため」と会見で訴えました。

刑事事件での処分が罰金30万円という軽いものに終わったのは、家族崩壊を恐れた被害者の意向があったからこそです。

それでも民事訴訟に踏み切り、事実を公にしようとした被害者の勇気が、今回の業界全体の議論を生んでいます。

1100万円という賠償額が被害の大きさに見合うかどうかは、また別の問題として残ります。

金銭的な補償がいかに不十分であっても、こうして社会的に事実が認知されることが、被害者にとって一つの「けじめ」になることもあるでしょう。

声を上げることが、どれほどの勇気と痛みを伴うものか。それを忘れずに受け止めたいと思います。

 

漫画業界の倫理基準が問い直される時代へ

海外の漫画ファンコミュニティでも「日本の漫画業界のダークサイド」として今回の事件が取り上げられており、輸出コンテンツとしての信頼性への影響も懸念されています。

日本漫画家協会は「業界の信頼に関わる重要な問題」として声明を出し、業界全体での信頼回復を呼びかけました。

漫画は日本が世界に誇る文化コンテンツですが、その土台を支える倫理基準がいかに脆弱だったかが、今回の事件で改めて浮き彫りになったといえます。

今後の調査委員会の結論、編集者・編集長の処分、そして業界横断的なガイドライン策定の行方。

どれ一つとっても、目を離せない展開が続きます。

「漫画を楽しむ側」の私たちも、この問題を「対岸の火事」として眺めるのではなく、業界の透明性を求める声の一つを担えるのかもしれません。

Xでは「マンガワンの声明再投稿で批判隠しをしているのでは?」という指摘も広がっており、SNS上での冷静な議論を求める声も増えています。

感情的になるのは当然ですが、二次被害を生まないためにも、一つひとつの情報を丁寧に見極める姿勢が大切ではないでしょうか。

事態はまだ進行中です。

今後の動きを引き続き注視していきたいと思います。

ABOUT ME
猫も毛づくろい
1976年生まれ、同い年の夫、長男(16歳)、次男(10歳)との4人家族。 長年勤めた会社を退職し、就活&専業主婦。 日々気になったことを書いてます